FPV機を自作したいけれど、どこから手を付ければよいか分からず不安になっていませんか。
パーツ選びや配線、フライトコントローラーの設定、映像送信の最適化など、工程が多い分だけ迷いや失敗のリスクが生じます。
本記事では必須パーツの選び方と準備、組み立て手順、電気配線の基本ルール、FC設定、映像の最適化、運用前チェックまでを実践的に解説します。
フレームやモーター、ESC、FC、カメラ、VTX、送受信機、バッテリー、ゴーグル、工具類ごとの具体的ポイントを順を追って説明します。
まずは準備段階から順に確認して、安全で安定した映像を得られる機体を本文で一緒に組み上げていきましょう。
FPVドローン自作必須パーツと準備
自作FPVドローンを始める際には、パーツの役割と相性を理解することが重要です。
ここでは、必須パーツごとに選び方のポイントと準備のコツをわかりやすく解説します。
フレーム
フレームは機体の骨格であり、耐久性と重量のバランスが飛行特性を左右します。
サイズは一般に機体寸法とプロペラ径に対応するため、用途に合わせて選ぶとよいです。
モーター
モーターは推力を生み出す心臓部で、KV値やサイズが性能の目安になります。
レース向けは高回転型を、フリースタイルはトルク重視のものを選ぶと相性が良いです。
ESC
ESCはモーターの回転制御を行うパーツで、対応電流とプロトコルの確認が必須です。
DShotなどのデジタル信号に対応しているかどうかも購入前に確認してください。
フライトコントローラー
フライトコントローラーは機体の制御とセンサー処理を担うコンポーネントです。
接続端子の配置やファームウェア対応を見て、将来の拡張性を考慮すると便利です。
FPVカメラ
FPVカメラは映像の視認性に直結するため、画角とダイナミックレンジを重視してください。
夜間飛行や逆光が多い環境では高ダイナミックレンジのモデルが有利です。
VTX
VTXは映像を送る送信機で、出力切替やチャンネル管理ができる機種が便利です。
取り付け位置や放熱対策も考慮して、安定した映像伝送を確保しましょう。
送信機
送信機は操縦感覚を左右する重要な機材で、スティックの感触やモジュール互換性を確認してください。
予算が許せば、ユーザー設定が細かくできるモデルを選ぶと長く使えます。
レシーバー
レシーバーは送信機からの信号を受け取る装置で、プロトコル互換とアンチロスト機能がポイントです。
取り付け位置や配線の取り回しもあらかじめ想定しておくと組み立てが楽になります。
バッテリー
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| LiPo 3S 4S | 高出力 長時間運用向け |
| LiHV | 高電圧 瞬発力に優れる |
| マイクロバッテリー | 軽量 機体小型化向け |
バッテリーは電圧と容量で飛行時間とパフォーマンスが決まります。
放電レート(C値)とコネクタ形状はモーターやESCとの適合性を必ず確認してください。
プロペラ
プロペラは推力と効率を決めるため、材質とピッチの組み合わせを試して適正を見つけます。
折れやすい環境なら耐衝撃性の高いモデルを選ぶと安心です。
アンテナ
映像と制御の安定性はアンテナ次第で大きく変わるため、指向性と耐久性を考慮してください。
機体取り付け時は遮蔽物や金属部品から離す配置を心がけると電波が良好になります。
ゴーグル
ゴーグルは映像の遅延や視認性を左右するため、解像度と受信方式を重視してください。
長時間の操縦には装着感も重要なので、フィット感を試せると良いでしょう。
工具類
組み立てに必要な工具は最初に揃えておくと作業がスムーズです。
- はんだごて
- 精密ドライバーセット
- ワイヤーストリッパー
- ニッパー
- マルチメーター
- 熱収縮チューブ
- 結束バンド
これらがあれば多くの配線作業やトラブルシューティングに対応できます。
機体組み立て手順
ここではフレームの組立からプロペラ取り付けまで、実際の手順を順を追って解説します。
各工程での注意点や工具選び、失敗しやすいポイントも併せて説明いたします。
フレーム組立
まずはフレームのパーツを広げて、付属図面と照らし合わせながらネジの種類を確認してください。
各アームとセンタープレートを仮組みし、ねじ山のかみ合わせを確認します。
ねじを本締めする際は一辺ずつ均等に締め、ねじが曲がらないように注意してください。
ネジロック剤は必要箇所に薄く塗布する一方で、ボルトを後で外す可能性がある箇所には控えめに使ってください。
モーターマウント
モーター取り付け前にブラシレスモーターのシャフトやネジ穴の位置を確認します。
| 項目 | 推奨ネジ |
|---|---|
| フレームアーム | M3 6mm |
| 薄型アーム | M3 8mm |
| 振動吸収パッド | ゴムブッシュ |
モーターは片側ずつ仮止めして、プロペラ取り付け時のクリアランスを確かめながら本締めしてください。
配線の取り回しは、アームの内側を通してプロペラに触れないように留意しましょう。
ESC固定
ESCは熱の逃げ場を確保して、振動が少ない場所に配置します。
フレームによっては専用のESCマウントやベルクロが付属するため、それらを活用してください。
はんだ面を下にして固定すると熱や振動によるダメージを減らせますが、冷却を妨げないように位置調整を行ってください。
FC搭載
フライトコントローラーはフレームの重心付近に配置し、向き表示をフレーム先端に合わせてください。
スタンドオフやゴムダンパーを使って振動を吸収し、フレームとしっかり絶縁します。
各ケーブルの長さを余裕を持って切り、はんだ付けやコネクタ差し込みを行って配線を整理してください。
カメラ取り付け
FPVカメラは視界の確保が最優先ですので、角度調整の自由度があるマウントに取り付けると便利です。
カメラ位置は衝撃時の保護も考えて、バンパーやフレームの奥まった場所を選びます。
取り付けネジは緩みやすいので、適量のネジロック剤を使用してください。
VTX接続
VTXは熱を持つため放熱を意識した位置に設置し、熱がこもらないように配慮します。
アンテナケーブルの取り回しは曲げや引っかかりを避けて、コネクタ部を保護してください。
電源はフライトコントローラーまたはPDBから安定供給されているか、事前に電圧を測って確認しましょう。
バッテリー搭載
バッテリーマウントは重心調整がしやすい位置にします。
ストラップで確実に固定し、接続部がプロペラやアームに触れないようにしてください。
- バッテリーストラップ
- ゴムダンパー
- 両面テープ
- 耐震パッド
着脱を繰り返す部分なので、保護用のパッドを貼るとフレームへのダメージを減らせます。
プロペラ取り付け
プロペラは推進方向に合わせて必ず正しい向きで取り付けてください。
取り付け前にネジ山とシャフトの状態を確認し、傷や汚れがあれば清掃します。
取り付けは手で確実に締め、フライト前点検で各プロペラの固定を再確認してください。
取り付け方向の確認に便利なチェックリストを用意すると、現場でのミスを減らせます。
電気配線と接続ルール
電気配線は機体の安全性と性能を左右する重要な要素です。
ここでは色の規約や電源、信号、グラウンド、絶縁、そしてコネクタ選びの実用的なルールを解説します。
配線色
| 色 | 用途 |
|---|---|
| 赤 | バッテリー正極 |
| 黒 | バッテリー負極 |
| 黄 | モーター信号 |
| 白 | UART TX |
| 緑 | UART RX |
配線色はメーカーでばらつきがあるため、必ず配線の目的を確認してください。
一般的な慣例として上の表を基準に配線すると、トラブルシュートが容易になります。
パワー配線
電源系は電流が大きいため、適切なAWGのケーブルを選ぶことが第一条件です。
ブラシレスモーターを使うFPVでは14AWGから20AWGがよく用いられますが、機体サイズとバッテリー電流に応じて太さを決めてください。
はんだ付けは丁寧に行い、冷間はんだやブリッジを防止するために十分なフラックスと量を使ってください。
バッテリーターミナル付近には容量のあるコンデンサを配置し、瞬間的な電圧降下を抑える対策をおすすめします。
パワー配線は可能な限り短く、かつ太くまとめると発熱と電圧降下が減ります。
信号配線
信号線はノイズに弱いため、モーターやESCから離して配線してください。
UARTやI2Cなどのシリアル通信は、ロジックレベルがフライトコントローラーと合っているか必ず確認が必要です。
SBUSやiBUSなどの受信機接続は一本の配線で済みますが、コネクタの向きや配線方向を間違えないよう注意してください。
長い信号線はツイストするか、シールド線を使って干渉を抑えると通信安定性が向上します。
グラウンド処理
グラウンドは共通にすることが基本ですが、ループを作らないことが重要です。
スター接地を意識して、主要な機器からグラウンドを一か所に集める配線を検討してください。
ESCやVTXなどノイズ源の近くでは、グラウンドの取り回しを工夫してノイズが敏感機器に伝わらないよう配慮しましょう。
絶縁対策
裸のはんだやむき出しの端子は必ず絶縁してください。
ヒートシュリンクチューブは基本の対策で、接続後に必ず収縮させて保護してください。
液体ゴムやコニカルシールなどの追加保護は、振動や衝撃で露出が生じる箇所に有効です。
コネクタ選定
- XT60 高電流向け
- JST-SR 小型機向け
- PH シグナル用小型コネクタ
- Molex 汎用接続
- Bulletコネクタ モーター配線用
コネクタは想定する最大電流と取り回しのしやすさで選ぶことをおすすめします。
接点の安定性と耐久性を優先し、はんだ付け後は必ず通電確認と引っ張り試験を行ってください。
フライトコントローラー設定と調整
フライトコントローラーの設定は、安全で安定した飛行の要です。
ここではBetaflightを中心に、レシーバー設定からPIDやフィルターの調整、OSD設定までを分かりやすく解説します。
Betaflight接続
まずはフライトコントローラーをPCに接続してBetaflight Configuratorを起動します。
ドライバが必要な場合は事前にインストールして、正しいポートが認識されていることを確認してください。
接続後はファームウェアのバージョンとPIDプロファイルの互換性を確認します。
- ドライバインストール
- ケーブル接続確認
- ポート選択
- ファームウェア確認
- バックアップ保存
バックアップを取ることで、設定を誤って消してしまった場合でも復元できます。
レシーバー設定
使用する受信機の方式に応じて、UARTポートやプロトコルを割り当てます。
S.BusやIBUS、CRSFなどプロトコルによって設定画面での選択肢が変わりますので注意してください。
BetaflightのReceiverタブでスティックの動作とチャンネルマッピングを確認します。
スティックの動きが方向と一致しない場合は送信機側のエンドポイントやリバース設定を調整してください。
Failsafe設定も必須で、受信機の信号が途切れた際の動作を確実に設定します。
モーターキャリブレーション
モーターの向きと回転方向を確認するため、プロペラは必ず外した状態で作業してください。
ESCのキャリブレーションは、使用するESCのタイプにより手順が異なりますが、基本はスロットルの最大と最小を同期させる作業です。
BetaflightのMotorsタブでスロットルレンジを調整し、各モーターが正しく回転するかを個別に確認します。
モーター音や振動に違和感がある場合は、配線やマウントの緩みをチェックしてください。
PID設定
PIDは機体の性格を決める重要な項目です。
初めての調整は小刻みに変更して、飛行テストで挙動を確認しながら進めるのが安全です。
| 軸 | P 範囲 | I 範囲 | D 範囲 |
|---|---|---|---|
| Roll | 30-50 | 40-70 | 18-35 |
| Pitch | 30-50 | 40-70 | 18-35 |
| Yaw | 70-120 | 30-60 | 0-20 |
上表は一般的な目安で、フレームやモーター、プロペラにより最適値は変わります。
Pを上げると応答が鋭くなり、Dは振動を抑える働きがあるため、両者のバランスが肝心です。
Iは姿勢の保持に関係しますので、遅延やドリフトが出るときに微調整してください。
フィルター設定
フィルターは振動ノイズを削減し、PIDの誤動作を防ぐ役割があります。
しかし過度なフィルターはレスポンスを鈍らせるため、適切な設定が求められます。
ノッチフィルターやLPF、BIQUADなどの種類があり、機体の振動特性に合わせて組み合わせます。
まずはログを取り、FFT解析などで振動周波数を特定してからフィルターを当てると効率的です。
フィルター調整後は必ず実機での挙動確認を行い、微振動や遅延が発生していないかチェックしてください。
OSD設定
OSDは飛行中の情報表示に不可欠で、バッテリー電圧やRSSI、フライトタイマーなどを表示できます。
BetaflightのOSDタブで表示項目をドラッグして配置する方式が一般的ですので、見やすさを優先して設定してください。
重要な数値は大きめに配置し、不要な表示はオフにしてゴーグル視界を確保します。
また、バッテリー低下時のアラートやフェイルセーフ表示も設定しておくと安心です。
設定後は地上での確認と短時間ホバリングで表示が正しいかを確認してください。
FPV映像と無線の最適化
FPV映像と無線の最適化はフライトの快適さと安全性に直結します。
出力設定や周波数、アンテナ配置を正しく整えることで、映像の途切れを減らし視認性を高められます。
VTX出力
VTXの出力は通常25mWから800mW以上まであり、出力を上げるほど到達距離と透過性が良くなります。
しかし出力を上げると発熱が増え、周囲のチャンネルに干渉するリスクも高まります。
屋外で長距離を飛ばす際は規制や周囲への配慮を優先し、必要最小限の出力を選択してください。
またSmartAudioやTRAMPなどのプロトコルで飛行中に出力切替やチャネル変更ができるように設定しておくと便利です。
VTXは通電時の初期出力設定を確認し、レースや練習に合わせたプリセットを用意しておくことをおすすめします。
周波数選択
周波数は主に5.8GHz帯がFPVで使われますが、混信や環境に応じてバンドとチャネルを選ぶ必要があります。
屋外の混雑した場所では近接する他機との干渉を避けるため、レースバンドや空きチャネルを事前に確認してください。
| バンド | 特徴 |
|---|---|
| レースバンド | 混雑時に管理されたチャネル割り当て レースイベントでの使用に最適 |
| 標準5.8GHz | 広くサポートされているチャネル 短距離での安定受信が期待できる |
| デジタルHD | 高画質で低遅延の映像 専用機器が必要 |
周波数選択の際は、ゴーグル側の受信可能チャネルと整合させることを忘れないでください。
アンテナ配置
アンテナ配置は受信感度と方向安定性に直結するため、機体とゴーグル両方で工夫が必要です。
アンテナ同士の位相干渉を避けるため、送信アンテナは互いに直交する向きに配置すると効果的です。
- 垂直 polarisation と水平 polarisation を分ける
- 機体後方に片方を向ける
- アンテナは柔軟にして衝撃に備える
- Diversity受信を活かすために左右分離する
プロペラやフレーム金属部から距離を取ることも重要で、近接金属や配線がアンテナの性能を落とすことがあります。
またアンテナの種類で特性が変わるため、用途に合わせて丸性能のあるものや指向性の高いものを選んでください。
ゴーグル互換
ゴーグル選びは受信方式と接続端子を確認することから始まります。
アナログとデジタルでは必須機材が異なり、DJIのデジタルシステムは専用モジュールが必要です。
SMAとRP-SMAなどのコネクタ規格の違いにも注意し、変換アダプタを用意しておくと便利です。
ゴーグルの受信感度やDVR機能、視野角や解像度も選択の重要ポイントになります。
他のパイロットと周波数やバンドを合わせるための互換性チェックは、現地での無線トラブルを防ぐ基本になります。
映像品質
映像品質はカメラ設定、VTX帯域、受信環境、そしてゴーグル側の処理能力で決まります。
カメラではホワイトバランスやシャッタースピードを調整し、光の変化に強い設定を見つけてください。
WDRや低照度性能が高いカメラを選べば、逆光やトンネルなどの条件でも視認性が向上します。
ビデオラインの電源は安定させ、ノイズフィルタを入れることでスクリーンノイズを減らすことが可能です。
最後に、飛行前に短時間の録画確認を行い、映像にゴーストやノイズ、途切れがないか確認してください。
運用前チェックリスト
飛行前に最低限確認すべき項目を簡潔にまとめます。
バッテリーの充電状態とコネクタの確実な接続を確認して下さい。
プロペラは外してモーター回転確認を行い、回転方向とスムーズさを目視でチェックします。
送信機とレシーバーのバインドが正常で、スティック操作が正しく入力されることを確認します。
VTXの出力設定とアンテナの取り付け、ゴーグル側の受信状態も必ず確認して下さい。
ファームウェア、PID、Failsafe設定を点検し、OSD表示で電圧やRSSIが正しく出るか確認します。
飛行場所は法規制を確認し、周囲の障害物や人の有無、風速をチェックして下さい。
最後にプロペラを取り付け、低スロットルで短時間ホバリングをして問題がないか確かめます。

