富士山の雄大な景色をドローンで撮りたいという気持ちは多くの人が共感するはずです。
しかし、富士山周辺ではドローン飛行が厳しく制限されており、なぜ飛行が禁止されるのか疑問を抱く人も少なくありません。
この記事では航空法や自然公園法に基づく法的根拠、安全面や野生生物への影響、周辺空域の制約といった理由を明確にします。
さらに許可申請の手順や主な規制区域、違反時の罰則、連絡先まで実務に役立つ情報を整理して解説します。
まずは禁止の背景と対応策の全体像を確認して、続きで具体的な申請書類や審査で重視されるポイントを見ていきましょう。
富士山ドローン禁止理由
富士山周辺でドローンが禁止される理由は複数の法令や現実的な安全懸念が重なっているためです。
自然環境の保全や航空安全、登山者の安全確保といった観点から、単に撮影の自由だけで判断できない事情があります。
航空法による制限
航空法では有人機との安全な分離や、空港近傍の空域保全が強く求められます。
目視外飛行や人や物件の真上での飛行は原則禁止されており、一定の条件下での許可が必要です。
富士山周辺は多くの航空機が通過する空域と重なるため、厳格な飛行計画と事前調整が求められます。
未許可で飛行した場合、行政処分や罰則の対象になり得ます。
自然公園法による規制
富士山は富士箱根伊豆国立公園の一部であり、自然公園法による保護対象です。
自然公園法では自然環境の保全と公衆の利用の両立を図るため、利用行為に制限を課すことができます。
ドローンは騒音や影響が大きいと判断される場所では原則禁止となる場合が多いです。
公園管理者が定めるルールや指示に従い、必要な手続きを経ることが前提です。
安全面のリスク(登山者・観光客)
落下やバッテリー故障による落下物は、登山道や休憩所にいる人々に重大な危険をもたらします。
プロペラの回転で負傷する事例や、突然の音により転倒などの二次被害が起こる可能性があります。
狭い登山道や混雑した五合目付近では、操縦ミスが思わぬ事故につながりやすいです。
さらに、救助活動が必要になった場合にドローンが妨げとなるリスクもあります。
生態系・野生動物への影響
ドローンの音や存在は鳥類や小動物にストレスを与え、繁殖行動を阻害する恐れがあります。
特に繁殖期や渡りの時期には近づくだけで営巣放棄を招く可能性があります。
微細な落下物や着陸跡が生息地を変質させ、長期的な生態系の変化に繋がる懸念もあります。
自然公園としての価値を守るため、影響評価を踏まえた慎重な対応が求められます。
プライバシー侵害と迷惑行為
無断で撮影されることによるプライバシー侵害の懸念が大きくあります。
観光客や近隣住民が撮影対象になることで、苦情やトラブルに発展するケースも見られます。
- 無断撮影
- 騒音による迷惑
- 落下による物損
- 接近による威圧感
こうした迷惑行為は地域の信頼を損ない、観光地としてのイメージ低下に直結します。
周辺空域と空港関連の制限
富士山周辺は複数の空港や飛行経路に影響を与える空域が広がっています。
空港周辺の管理空域やTMA(航行区域)に入る場合、厳格な調整と許可が必須です。
また、NOTAMで一時的な飛行制限が出ることもあり、事前確認が欠かせません。
| 空港名 | 主な留意点 |
|---|---|
| 富士山静岡空港 | 周辺管制区域 |
| 羽田空港 | 進入経路の影響 |
| 富士山周辺のヘリ運航拠点 | 低空飛行の存在 |
これらの空域制限に違反すると、航空当局からの厳しい対応や刑事処分につながる可能性があります。
富士山での許可申請手続き
富士山でドローンを飛行させる際は、事前に関係機関への許可申請が必要です。
ここでは申請の窓口や必要書類、飛行計画書の作り方、審査で重視される点をわかりやすく解説します。
事前相談窓口
まずは飛行予定地の管理者に相談することをおすすめします。
富士箱根伊豆国立公園の管理事務所は自然公園としての規制や許可条件を案内してくれます。
都道府県の観光や環境担当部署も観光地の事情や地域ルールを把握しています。
地元警察署は安全対策や周辺の交通規制の必要性について助言してくれます。
国土交通省の地方航空局やウェブポータルで、無人航空機の飛行許可手続きについての情報を確認できます。
繁忙期や特別保護期間には審査に時間がかかるため、余裕をもって相談を始めると安心です。
必要書類
申請に必要な書類は複数あり、提出内容の不備があると審査が遅れます。
- 無人航空機飛行申請書
- 飛行計画書
- 機体仕様書または取扱説明書の写し
- 操縦者の資格証明書の写し
- 保険加入証明書
- リスクアセスメント資料
- 地権者の承諾書(該当する場合)
申請先によっては、追加で現地の承認書や環境影響評価を求められることがあります。
書類は指定様式を使用し、記載漏れがないようにチェックしてから提出してください。
飛行計画書
飛行計画書は審査の中心となる書類で、内容の詳細さが合否に直結します。
| 項目 | 記載例 |
|---|---|
| 飛行日時 | 希望日と時間帯 |
| 飛行経路 | 出発地と到着地の座標 |
| 飛行高度 | 最高飛行高度の明示 |
| 離着陸地点 | 指定の地名または座標 |
| 目的 | 業務撮影または調査 |
| 緊急対応 | 異常時の手順と避難経路 |
| 連絡先 | 操縦者と責任者の連絡情報 |
表に挙げた項目に加えて、地図や航路図の添付が重要です。
KMLやPDFで予想飛行経路をわかりやすく示すと審査がスムーズになります。
また、近隣に空港や有人機の航路がある場合は、管制機関との調整計画を明記してください。
審査で重視される項目
安全対策の具体性は最も重視されるポイントになります。
操縦者の資格や経験年数、過去の飛行実績は評価に直結します。
機体の整備状況やフェイルセーフ機能の有無も重要な判断材料です。
人や登山道への影響を最小化するための飛行高度やルート設定が求められます。
自然環境への配慮として、繁殖期や希少生物の生息地を避ける計画が必要です。
保険の加入状況と補償範囲はリスク対策としてチェックされます。
緊急時の連絡体制や地元関係者との連携方法が明確であると評価が高くなります。
提出書類の正確さと、事前相談での誠実な対応が審査を有利に進める要素です。
富士山内の主な規制区域
富士山内には安全確保と自然保護のために細かく規制区域が設定されています。
ここでは代表的な場所ごとの特徴と注意点をわかりやすく解説します。
山頂火口周辺
山頂の火口周辺は噴火や地形変化の影響が大きく、一般的に最も厳しい規制がかかっています。
火山活動の監視対象であることに加えて、風の影響でドローンが制御を失うリスクも高いです。
| 規制内容 | 主な理由 |
|---|---|
| 飛行禁止 | 安全確保 |
| 立入制限区域あり | 火山活動監視 |
| 撮影は例外的に要許可 | 環境負荷低減 |
登山道・休憩所周辺
登山道や休憩所は多くの登山者が密集するため、落下や機体トラブルが重大事故につながります。
風が急変することもあり、意図せぬ機体挙動で人に接触する危険性が高いです。
こうした場所では原則として飛行を控えることが求められ、場合によっては地元管理者から現場退去を指示されます。
五合目周辺の観光地
五合目周辺は観光施設や駐車場が集まり、観光客の安全と快適性を守る必要があります。
商業撮影やイベントで利用する場合は、事前に関係機関と調整することが必須です。
- 駐車場上空の低空飛行禁止
- 展望台付近での離着陸禁止
- 商業利用は事前申請必要
- 混雑時の飛行自粛
河川・湖沼周辺
河川や湖沼の上空は自然環境や生態系への影響を避けるために特別な配慮が必要です。
渡り鳥や水辺の生物はドローンに驚き、営巣や採餌行動が妨げられることがあります。
また、水面への不時着が発生すると回収や二次被害のリスクが高く、飛行許可が制限される場合があります。
違反時の罰則と摘発事例
富士山周辺でのドローン違反は、単なる注意で済まないことが多いです。
法律や条例に基づく行政処分や、場合によっては刑事処分につながります。
登山者や自然環境への影響が大きい場所では、厳格な対応が行われる傾向にあります。
行政罰・罰金
まず航空法違反としての行政罰が挙げられます。
許可なく人の頭上などで飛行させた場合、罰金や行政指導の対象になります。
国立公園法や自然公園の規則に違反した場合は、都道府県による罰則が適用されることがあります。
| 対象規定 | 主な罰則例 |
|---|---|
| 航空法 | 罰金 50万円以下 飛行停止命令 |
| 国立公園法 関連規則 | 過料 命令 立入禁止措置 |
| 都道府県条例 | 罰金規定 営業禁止処分 |
表は代表的な例を示したもので、実際の処分額や内容は事案により異なります。
刑事責任
悪質な飛行は刑事罰に問われる可能性があります。
例えば人に危害を与えた場合や、重要インフラに損害を与えた場合は、業務妨害や危険運転等で立件されます。
無許可で空港周辺の空域に侵入し、航空機の安全を脅かした場合は重い処罰が科されることがあります。
懲役や罰金の適用、前科が付くリスクがある点は理解しておく必要があります。
過去の摘発事例
ここでは実際に報告された摘発例を簡潔に紹介します。
- 登山道上空での無許可飛行で罰金処分
- 五合目の観光地での撮影に伴う行政指導
- 山頂付近での飛行が原因で救助活動を妨げた事案
- 空港周辺空域侵入により警察が出動した事例
これらの事例はいずれも、事前の許可申請や安全対策が不十分だった点が共通しています。
富士山は多くの関係機関が監視しており、違反が発覚すれば迅速に対応されます。
管理主体と連絡先の種類
富士山周辺でドローン飛行を検討する際には、複数の管理主体に連絡や許可が必要になることが多いです。
それぞれの窓口で目的や飛行エリア、日時に応じた手続きが異なりますので、事前に確認することをおすすめします。
富士箱根伊豆国立公園管理事務所
富士山が属する国立公園の管理事務所は、自然公園法に基づくルールや許可の一次窓口になります。
環境保全や利用調整の観点から、撮影目的や機材の種類によって対応が変わりますので、事前相談をしてください。
- 許可申請の相談
- 禁止区域の確認
- 環境影響の助言
- 利用ルールの周知
電話やメールでの問い合わせに加え、窓口での面談を求められる場合がありますので、時間に余裕を持って連絡してください。
都道府県の観光・環境担当窓口
富士山は複数の都県にまたがるため、各都道府県の担当窓口にも確認が必要です。
観光振興や環境保全の観点から、地域ごとの独自ルールや注意事項が設けられていることがあります。
撮影による混雑対策や観光地の特別措置がある時期は、地元自治体の指示に従うようにしてください。
地元警察署
安全面や治安対策のために、地元警察署への事前連絡や許可が求められるケースがあります。
特に人が密集する五合目周辺や登山道では、警察への届出で安全確保の協力を依頼されることが多いです。
飛行時間帯や高度、離発着場所などを具体的に伝え、警察からの助言や指示を受けてください。
空港・航空管制機関
富士山周辺は複数の空港や航空路と関係する空域制限があるため、航空管制機関への確認が必須です。
小型ドローンであっても、空港周辺や進入路に近い場合は飛行許可が下りないことがあります。
| 機関 | 対応内容 |
|---|---|
| 航空局 | 飛行許可手続き 飛行制限情報 |
| 空港管理者 | 周辺運用情報 離着陸制限 |
| 航空管制官 | 進入経路の確認 一時的制限の連絡 |
国土交通省航空局のウェブサイトやローカル空港の案内を必ず確認し、必要ならば正式な許可申請を行ってください。
安全と法令順守で富士山を守る行動指針
富士山で活動する際は、関連法令や国立公園の規則を事前に確認してください。
ドローンなどの無人航空機は原則飛行禁止で、やむを得ない場合は所定の許可申請を行い、必要書類を整えて取得してください。
登山者や観光客の安全を最優先に考え、機材の管理や飛行時間帯にも配慮し、周囲に迷惑をかけないよう心がけましょう。
野生動物や植生への影響を避けるため、静粛に行動し、立ち入り禁止区域や保護区域には入らないでください。
撮影や研究で許可を得る際は、飛行計画や保険加入などの記録を残し、関係機関と事前に相談することをおすすめします。
違反は罰則や社会的信用の失墜につながるため、ルールを守ることが自己防衛であり、富士山の保全に直結します。
疑問や緊急時には、富士箱根伊豆国立公園管理事務所や地元警察に速やかに連絡してください。


